2015年3月
後を絶たない無謀なインストラクター・・・。
DAN運営委員長
眞野 善洋
いくら安全潜水を説いても事故がなくならない状況の中、それを裏付けるかのような、資質を疑いたくなるインストラクターの言動が気になる昨今である。自身で潜るだけならまだしも、安全潜水の何たるかや、潜水の基本的なルールも知らないインストラクターが人に潜水を教えているのだから、減圧症を始めとする潜水事故を防ぐ事など、絵空事と思わざるを得ない。
たとえば、DANホットラインも、ずいぶんと気まぐれで自分勝手なインストラクターからの問い合わせが多い。
或るインストラクターは潜水後に下肢の痺れが出現しているにも関わらず、「どうしても海外へ渡航して潜らなければならないので、翌々日の渡航までの間に何をするべきでしょうか!」と助言をもとめてきた。診察してもらった病院の医師からは減圧症の疑いがあると診断されが、その医師の診断方法が正規なものでないからと、改めてDANホットラインに連絡を寄こし、その医者の批判までする始末。渡航することも潜水することも不可と指示しても従う様子はないので、こちらとしては「診察医師の診断に不満があるなら、別の病院で受診してください」と言わざるを得ない。fkying after diving の怖さについては前回の会報誌Alert Diver43号でも報告したように、ほとんどの会員にとっては常識であろうと思われるが、そのインストラクター自身は減圧症に罹患していることを自覚していながら、海外渡航をやめたくないために、自分の主張を優先するばかりだった。
沖縄や伊豆諸島などでは、午後のフライトで帰京することを知っているはずのインストラクター(ガイド)から午前中のダイビングを勧められたファンダイバーが、上空ないしは羽田着陸後に減圧症に罹患したとゆう報告も少なくない。海外では、減圧症の症状が出現しているにも関わらず、治療費が高いからと、日本での帰国治療を勧めるガイドインストラクターも多いと聞く。
一昨年の一年間に東京医科歯科大学付属病院で治療を受けた減圧症患者は300人だったが、その中の85名は潜水後24時間以内の搭乗をしており、36名は6時間以内に高所移動をしていた(AlertDiver、vol43,p10-12.2010)つまり、大学病院を来院された減圧症患者の40%以上が高所移動ないしflying after divingだったとゆうことになる。そのようなことを容認するガイドやインストラクターの資質を疑うのは当然だろう。
まして、前述のインストラクターはすでに両下肢の中枢神経麻痺症状が出ているにもかかわらず渡航を優先するなど、言語道断と言わざるを得ない。Safety with own riskだから減圧症に罹患するしないは本人の勝手だと、開き直られてしまうと二の句がつげないが、少なくともDAN会員にはそのようなダイバーは存在してほしくないと願っている。
最後にスポーツダイバーの草分けともいえる須賀次郎さんの言葉を添えよう。「よくレジャーダイビングといいますが、私はダイビングをスポーツと考えていなす。スポーツの精神は競技ですが、ダイビングは他人と争うスポーツではなく、自分自身と戦うスポーツです。勝ち負けで言うならば、ダイビングをして無事に帰還して初めて勝ちあり、負けとはすなわち死を意味します。ダイビングでは、1,000勝0敗はあっても998勝2敗はないのです」1敗はつまり〝死〟であり、それでthe endというのが彼の主張だろう。
DAN会員もスポーツダイバーとして常に全戦全勝を納めなければならない。そのためにも、安全潜水は我々の永遠のテーマということを、肝に銘じたい。
DAN JAPAN会報
Alert Diver vol.44 2010 Spring より